高次脳機能障害・脊髄損傷・遷延性意識障害の代表的な3つの傷病以外にも、重度の後遺症(後遺障害)と位置付けられる傷病があります。
主な傷病には、以下のものがあります。
弁護士に相談していただくことで後遺障害の等級認定に違いが出る可能性があります。
<主な重度後遺障害の症状>
- 重度の視力低下・失明
- 重度の聴力低下・聴力の喪失
- 腕・足・手足の指の切断
- 外傷性てんかん
- 臓器機能の障害
1 重度の視力低下・失明
交通事故が原因で視神経の損傷や眼球そのものに外傷を負い、失明や視力の低下といった症状が生じることがあります。
「失明」とは眼球を失った場合や明暗が判断できない、または明暗がようやく区別できる程度の場合のものをいいます。「視力の低下」とは、眼鏡やコンタクトレンズによる矯正後の視力の低下が認められることを言います。
失明の有無や低下した視力の程度に応じて後遺障害等級が認定される可能性があります。
<失明・視力の低下と目安となる後遺障害等級>
両眼が失明 | 1級 |
1眼失明し、かつ他眼の視力が0.02以下に低下 | 2級 |
両眼の視力が0.02以下に低下 | 2級 |
1眼失明し、かつ他眼の視力が0.06以下に低下 | 3級 |
両眼の視力が0.06以下に低下 | 4級 |
1眼失明し、かつ他眼の視力が0.1以下に低下 | 5級 |
両眼の視力が0.1以下に低下 | 6級 |
1眼失明し、他眼の視力が0.6以下に低下 | 7級 |
1眼が失明 | 8級 |
1眼の視力が0.02以下に低下 | 8級 |
両眼の視力が0.6以下に低下 | 9級 |
1眼の視力が0.06以下に低下 | 9級 |
1眼の視力が0.1以下に低下 | 10級 |
1眼の視力が0.6以下に低下 | 13級 |
2 重度の聴力低下・聴力喪失
交通事故が原因で、聴力が低下・喪失した場合には、その程度に応じて、以下の後遺障害が認定される可能性があります。
聴力は、主に「純音聴力検査」と「語音聴力検査」の方法で判定されます。
<聴力の低下と目安となる後遺障害等級>
両耳の聴力が喪失 | 4級 |
両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解せない | 6級 |
一耳聴力の完全喪失、かつ他耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解せない | 6級 |
両耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解せない | 7級 |
一耳聴力の完全喪失、かつ他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解せない | 7級 |
両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解せない | 9級 |
一耳が耳に接しなければ大声を解せず、かつ他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解せない | 9級 |
一耳の聴力を完全に喪失 | 9級 |
両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解するのが困難 | 10級 |
一耳が耳に接しなければ大声を解せない | 10級 |
両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解せない | 11級 |
一耳の聴力が40cm以上の距離では普通の話声を解せない | 11級 |
一耳の聴力が1m以上の距離では小声を解せない | 14級 |
3 手足の切断
交通事故が原因で、腕や足、手足の指を切断(欠損)した場合、切断(欠損)した部位に応じて、後遺障害の等級が認定される可能性があります。
<腕の切断と目安となる後遺障害等級>
両上肢を肘関節以上で失ったもの | 1級 |
両上肢を手関節以上で失ったもの | 2級 |
1上肢を肘関節以上で失ったもの | 4級 |
1上肢を手関節以上で失ったもの | 5級 |
<足の切断と目安となる後遺障害等級>
両下肢を膝関節以上で失ったもの | 1級 |
両下肢を足関節以上で失ったもの | 2級 |
両下肢をリスフラン関節以上で失ったもの | 4級 |
1下肢を膝関節以上で失ったもの | 4級 |
1下肢を足関節以上で失ったもの | 5級 |
1下肢をリスフラン関節以上で失ったもの | 7級 |
<手の指の切断と目安となる後遺障害等級>
両手の手指の全部を失ったもの | 3級 |
1手の手指5本とも失ったもの | 6級 |
1手の手指の親指を含む4本の手指を失ったもの | 6級 |
1手の親指を含む3本の手指の全部を失ったもの | 7級 |
1手の親指以外の4本の手指の全部を失ったもの | 7級 |
1手の親指を含む2本の手指の全部を失ったもの | 8級 |
1手の親指以外の3本の手指の全部を失ったもの | 8級 |
1手の親指を失ったもの | 9級 |
1手の親指以外の2本の手指を失ったもの | 9級 |
1手の人差指、中指又は薬指を失ったもの | 11級 |
1手の小指を失ったもの | 12級 |
1手の親指の指骨の一部を失ったもの | 13級 |
1手の親指以外の手指の指骨の一部を失ったもの | 14級 |
<足の指の切断と目安となる後遺障害等級>
両足の足指の全部を失ったもの | 5級 |
1足の足指の全部を失ったもの | 8級 |
1足の親指を含む2本以上の足指の全部を失ったもの | 9級 |
1足の親指を失ったもの | 10級 |
1足の親指以外の4本の足指を失ったもの | 10級 |
1足の第2の足指(手指での人差指)を失ったもの | 12級 |
1足の第2の足指(手指での人差指)を含む2本の足指を失ったもの | 12級 |
1足の第3の足指(手指での中指)以下の3本の足指を失ったもの | 12級 |
1足の第3の足指(手指での中指)以下の1本又は2本の足指を失ったもの | 13級 |
4 外傷性てんかん
「てんかん」とは、意識を失って反応がなくなるなどの発作を繰り返し起こす病気のことをいい、医学上の定義は「大脳ニューロンの過剰な突発的発射に由来する反復性の発作を主徴とする慢性の脳疾患」というものです。
「てんかんの症状」としては、意識障害、意識が混濁し転倒する(=「転倒する発作」)、意識障害を伴わず気分不良・頭痛・吐き気・異常行動(=「転倒する発作」以外の発作)などがある。
交通事故を原因とする「外傷性てんかん」についても、その症状の程度に応じて、後遺障害等級が認定される可能性があります。
<外傷性てんかんの診断基準>
- てんかん発作の症状が認められること
- 受傷前にてんかん発作がなかったこと
- 外傷が脳損傷を起こすのに十分な程度であること
= 画像上に脳損傷の所見が認められること
- てんかん発作の初発時期が外傷からあまり経過してないこと
(外傷性てんかんの初発は2年以内が80%)
- 他にてんかん発作を起こすような脳や全身疾患を有しないこと
- てんかんの発作の型・脳波所見が脳損傷部位と一致していること
<外傷性てんかんと目安となる後遺障害等級>
てんかん発作のために常に介護を必要とする | 1級 |
意識障害を伴う発作が平均して1週あたり1回以上多発し、随時の介護を必要とする | 2級 |
意識障害を伴う発作が1ヵ月に2回以上多発するため、終身労務に服することができない | 3級 |
1カ月に1回以上の頻度で「転倒する発作」がある | 5級 |
数か月に1回以上の頻度ながら「転倒する発作」がある | 7級 |
1ヵ月に1回以上の頻度で「転倒する発作」以外の発作がある。 | 7級 |
数か月に1回以上の頻度ながら「転倒する発作」以外の発作がある。 | 9級 |
服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されている。 | 9級 |
服薬も不要でてんかん発作は発現していないが、脳波上に明らかなてんかん性棘波を認める。 | 12級 |
5 臓器機能の障害
内臓(呼吸器、循環器、消化器、泌尿器、生殖器)は、どれも生命の維持に重要な役割を果たしています。
交通事故が原因で、内臓に障害を伴った場合、日常生活や就労に支障が生じ、障害の程度によっては生涯に亘って介護が必要となることもあります。
障害の部位・程度によって、後遺障害等級が認定される可能性があります。
<臓器機能の障害と目安となる後遺障害等級>
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | 1級 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | 2級 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | 3級 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 5級 |
両側の睾丸を失ったもの | 7級 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 7級 |
生殖器に著しい障害を残すもの | 9級 |
胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの | 9級 |
胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの | 11級 |
胸腹部臓器の機能に障害を残すもの | 13級 |