脊髄損傷の等級認定と問題点

1.脊髄損傷の等級認定

(1)等級認定において考慮されるポイント

脊髄損傷の場合の後遺障害認定基準は、「脊髄損傷の等級認定基準」において説明したとおりですが、後遺障害の等級認定においては、脊髄損傷(麻痺の範囲及び程度)の裏付けとなる所見の存在が必要となります。また、被害者の訴える症状と各検査における所見の整合性、症状の経過・推移、事故の衝撃の程度などを総合的にみて麻痺の範囲や程度などが検討・判断されることになります。

自賠責保険では、後遺障害診断書の他、脊髄症状の具体的程度の判定や神経学的所見の推移に関する資料、これらを裏付けるCT・MRI等の画像・検査所見、さらに被害者の日常生活における動作能力や生活状況を示す日常生活状況報告書などの資料を提出し、等級認定を受けることになります。

 

(2)等級認定に関する診断・検査方法

<画像診断>

脊椎の骨折や脱臼等の確認や脊柱の不安定性の評価のために、単純X線検査によって傷害部位の診断がなされることがあります。さらに脊髄損傷が疑われる場合には、CTやMRI(T1強調画像、T2強調画像)を撮影して具体的な脊髄の損傷部位が診断されます。脊髄損傷における所見としては、特に精度の高いMRI画像所見(脊髄の形態変化、髄内信号変化等)が重視されています。

脊髄損傷では、これらの画像所見が最も重要な診断根拠となりますが、これのみで損傷が明らかとならない場合は、神経学的検査や電気生理学的検査を補助的に用いることで診断を行うことになります。

<神経学的検査>

神経学的検査においては、深部腱反射の減弱・消失や、病的な反射の有無を調べたり、筋力の検査(徒手筋力テスト(MMT))、膀胱や肛門括約筋機能の検査、感覚テスト等を行うことにより、脊髄損傷の起きている範囲(損傷高位)と程度が検討されます。

<電気生物学的検査>

電気生物学的検査として、筋電図などの検査が行われることがあります。筋力低下、麻痺、筋萎縮などの診断に有用といわれています。

 

2.脊髄障害の等級認定に関する問題

(1)中心性頸髄損傷

脊髄損傷の診断がなされる場合に、「中心性頚髄損傷」と診断される場合があります。

中心性頚髄損傷とは、骨傷を伴わないあるいは骨傷が明らかでない脊髄不全損傷で、頚髄が完全に損傷するのではなく頚髄の中心部分だけに損傷が生じる脊髄損傷をいいます。この場合、画像によって所見が確認できないケースも多いことから、脊髄障害と認定されずに問題となることが多いのです。

認定を得るためには、医学的な各種所見や症状の経過等を慎重に検討する必要があります。仮に脊髄障害として認定されない場合には、末梢神経障害非器質性精神障害(転換性障害、外傷性神経症,うつ病等)として認定が受けられないかについても検討する必要があります。

 

(2)経年性の変形が認められる場合

椎間板ヘルニア、後縦靱帯骨化症(OPLL)、脊柱管狭窄症等の経年性の脊椎変形が認められる場合には、そもそも当該症状が交通事故を原因とするものであるか、あるいは交通事故とあいまって生じているものなのか、といった点で問題となることがあります。

このような場合、脊髄損傷を基礎づける所見や症状経過の有無、他の原因の可能性などを画像検査等の結果を踏まえて慎重に判断されることとなります。

また、これらの経年性の変性がもともと罹患していた疾患(既往症)と認められ、損害の発生や拡大に影響している場合には、その影響の度合いにより割合的な賠償額の減額が認められることがあります(素因減額)。

 

(3)画像上・神経学上の異常所見が認められない場合

脊髄障害が疑われる症状が残存しているが、異常所見がない場合は脊髄損傷と認定されることは極めて困難です。もっとも、脊髄障害と認められない場合であっても、事故後一貫して神経症状を訴えている場合などには、末梢神経障害として認定されたり、それも認められないケースでは非器質性精神障害として認定されることがあります。

 

(4)症状経過が一般的な傾向と整合しない場合

通常、脊髄障害の症状は、事故直後が最も重篤となるはずですが、事故後に症状が悪化したり、傷病名が変遷するようなケースもあります。このような場合、交通事故の態様、通常の病態との乖離の状況などを踏まえて、医学的に合理的な説明ができない場合には、脊髄障害が否定される場合があります。

 

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