脊髄損傷の損害賠償

脊髄損傷の場合においても、基本的には他の後遺障害の場合と同様の損害賠償を求めていくことになります(請求可能な内容については、後遺症を負った際に請求できる損害賠償のページをご参照下さい。)が、特に問題となりやすい損害の内容についてご説明します。

脊髄損傷の損害賠償の特徴としては、(年齢や受傷前の収入などにもよりますが)逸失利益や将来介護費等が高額となる傾向があり、1億円を超えるような高額の賠償が認められる場合も少なくありません。

 

1.問題になりやすい損害の項目

① 逸失利益

脊髄障害として等級が認定される場合には、後遺障害等級1級1号、2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号という等級が認定され、認定された等級の内容に応じて逸失利益が認められます。逸失利益については、一般に等級が重度になるほど損害額も高額となりますが、実際に生じている具体的な後遺症の内容を踏まえて、等級ごとに通常認められる労働能力喪失率よりも高い喪失率が認定される可能性もあることから、その被害状況を詳細に主張・立証していくことが大切になってきます。

 

② 慰謝料

脊髄障害においても、他の重度後遺障害と同様、等級に応じた一定の慰謝料の基準(「後遺障害等級と慰謝料」をご参照下さい。)をベースに標準的な慰謝料額が算定されます。もっとも、障害の内容や事故の態様などにより、増額が認められたり、被害者ご本人だけでなく、配偶者、子ども、ご両親等も慰謝料を請求することができる場合があります。

 

③ 将来介護費

脊髄障害は、身体の麻痺や排尿排便障害等の障害が残存するケースが多いことから、このような場合には将来にわたって日常生活における介護が必要となります。そのため、将来介護費についても交通事故に起因する損害として請求していくことになりますが、その金額は極めて高額になるため、争いとなることが多い損害項目といえます(詳細については、「将来介護費・将来治療費」のページもご参照下さい。)。

脊髄障害の場合には、麻痺の程度、感覚機能・運動機能の障害の程度、排尿排便機能の障害の程度などに応じて、どの程度の介護が必要となるか(介護の担い手(近親者か職業人か)、介護の態様(常時介護か随時介護か)、介護の内容、介護の期間(死亡時までか、平均余命までか、さらに限定されるか)等)を慎重に検討し、主張を行う必要があります。

 

④ その他

将来介護費のほかにも、自宅改造費、自動車改造費・介護車両代、介護用品代、将来治療費(手術費)などついて、同様の問題が生ずることがあります(「家屋改造費」、「定期的に交換が必要となる物品」等のページもご参照ください。)。いずれも、症状の内容に応じて必要性・相当性が立証されれば損害として認められることになります。

 

2.脊髄損傷の場合の損害例

脊髄損傷の場合、非常に賠償額が高額となるケースが少なくありません。例えば、脊髄損傷で2級1号が認定された大阪地裁平成27年1月21日の判決では、以下のとおり、合計1億0621万8912円の損害が認められています。

43歳・女性・兼業主婦(基礎収入:345万9400円)のケース

治療費:1363万0252円

入院雑費:37万3500円(入院249日)

付添看護費:162万3000円(入院249日、通院・在宅292日)

通院交通費:4万6425円

装具購入費:76万3123円

ソファ・ベッド購入費:16万4180円

休業損害:512万7494円(事故日から症状固定日まで541日)

入通院慰謝料:389万円

将来の装具等購入費:350万0741円

将来介護費:3142万9420円(67歳まで日額4000円、以降日額8000円(平均余命まで))

後遺障害逸失利益:4911万0641円(労働能力喪失率:100%、労働能力喪失期間:24年)

後遺障害慰謝料:2400万

損害の填補:-3921万3890円(任意保険既払金+自賠責保険金)

弁護士費用:940万

確定遅延損害金:237万4026円

合計:1億0621万8912円

 

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