脊髄障害の事例紹介

1.大阪地判平成26年3月26日交民47巻2号431頁

<事案>

後遺障害の内容/等級:中心性頸髄損傷(上肢・軽度、下肢・中等度の麻痺)、脊柱変形/併合2級(中心性頸髄損傷・3級、脊柱変形11級)

年齢・性別・職種:36歳(症状固定時)・男性・建築業自営

賠償額(総額):約6850万円(但し、過失割合は原告3:被告7)

<判例の概要>

自賠責では中心性頸髄損傷として7級4号と認定されたが、専門医でない救急医ないし研修医による救急初期段階の「麻痺なし」等の診断が不十分であり、専門医によるその後の診断や検査所見から症状の一貫性が認められるとして、上肢軽度麻痺、下肢中等度麻痺の残存を理由として後遺障害等級3級該当と認定したケース

<本事例のポイント>

本事例は、自賠責の判断では後遺障害等級7級相当と認定されていましたが、裁判所が、救急初期段階における救急医等の診断内容の的確性を否定し、実際の症状の内容、専門医による診断や検査所見の内容を重視して、後遺障害等級3級と認めた事例で、自賠責と裁判所の判断が分かれたケースになります。

一般に受傷直後の診断は重要とされますが、その際に診断をした医師の専門性や被害状況によっては、本事例のように的確性が問題となる事案がありますので、治療経過全体を踏まえた判断が重要となります。

 

2.大阪地判平成27年1月21日交民48巻1号108頁

<事案>

後遺障害の内容/等級:脊髄損傷(上肢・軽度、下肢・中等度の麻痺)/2級1号

年齢・性別・職種:43歳(症状固定時)・女性・兼業主婦

賠償額(総額):約1億0600万円

<判例の概要>

自賠責では四肢のしびれ感、歩行困難、両上肢の巧緻運動障害等の症状につき3級と認定されたが、事故後の症状悪化についてもMRI検査等の画像所見の結果や担当医の意見などを踏まえ、交通事故との因果関係は否定されないとして、これらの事情を考慮して後遺障害等級2級1号に相当するとしたケース

<本事例のポイント>

この事例では、受傷直後よりもその後に症状が悪化した点について、交通事故との因果関係を認めた点がもっとも重要なポイントといえます。

一般に、脊髄障害の症状は、事故直後が最も重篤となるとされます(「脊髄損傷の等級認定と問題点」(症状経過が一般的な傾向と整合しない場合)もご参照下さい。)が、検査所見の内容や医師の意見などを踏まえて、受傷後の症状悪化が医学的根拠をもって合理的に説明可能な場合には、因果関係が認められるケースもあります。本事例では、医師への照会に対する回答内容が判断の根拠の一つとされており、このように適切な立証活動が重要であったケースといえます。

 

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