高次脳機能障害の診断・認定基準

1 自賠責保険における高次脳機能障害の認定システムについて

自賠責保険においては、高次脳機能障害の認定基準として「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムの充実について」(報告書)』(以下単に「報告書」といいます。)が開示されています。なお、この報告書は、平成23年3月4日付で公表され、その後さらなる見直しを経て、平成30年5月31日付にて新たに同様の名称にて公表がされています。

自賠責保険における高次脳機能障害の認定においては、まず、事故による脳損傷の有無を判断し、次に障害の内容・程度の判断2段階で検討されます。

 

2 事故による脳損傷の判断

報告書においては、「脳外傷」を「脳の器質的損傷を意味する」と定義し、「脳外傷による高次脳機能障害」というときは、脳の器質的損傷による障害を意味することになる』とされています。そして、「脳外傷による高次脳機能障害の症状を医学的に判断するためには、意識障害の有無とその程度・長さの把握と、画像資料上で外傷後ほぼ3カ月以内に完成する脳室拡大・びまん性脳萎縮の所見が重要なポイントとなる」と記載されています。

つまり、自賠責保険において、高次脳機能障害に該当するか否かの判断にあたっては、①意識障害の有無・程度、②画像所見の有無が重要となります。

①意識障害の有無・程度について

報告書によると、「脳外傷による高次脳機能障害は、意識消失を伴うような頭部外傷後に起こりやすいことが大きな特徴である。脳外傷直後の意識障害がおよそ6時間以上継続するケースでは、永続的な高次脳機能障害が残ることが多い」とされています。

そのため、自賠責保険では、事故後に一定の意識障害(半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態:JCSが3桁~2桁、GCSが12点以下)が少なくとも6時間以上、もしくは、健忘あるいは軽度意識障害(JCSが1桁、GCSが13~14点が少なくとも1週間以上続いた症状が脳外傷による高次脳機能障害が残存する可能性があるものとして審査対象とされています

②画像所見の有無について

報告書では、「画像資料上で外傷後ほぼ3カ月以内に完成する脳室拡大・びまん性脳萎縮の所見が重要なポイントとなる」とされています。そして、この画像所見は、MRI画像やCT画像によることが自賠責保険における障害認定実務とされており、他の画像検査方法については評価が定まっていないのが現状です。

なお、上記①と②の問題とは別ですが、報告書では,高次脳機能障害は「脳外傷後の急性期に始まり多少軽減しながら慢性期へと続く」という症状経過が一般的な特徴であるとされています。したがって、頭部への打撲等があってもそれが脳損傷を示唆するものではなく、いったん通常の生活に戻った数か月後に症状が出現し憎悪したような場合は、内因性の疾病が発症した可能性が高いとされています。

 

3 障害の内容・程度の判断

この判断の認定については、自賠責保険では、高次脳機能を4つの機能に分類(①意思疎通能力(記銘・記憶力、認知力、言語力等)、②問題解決能力(理解力、判断力等)、③作業負荷に対する持続力・持久力及び④社会行動能能力(協調性等))し、それぞれの喪失の程度に着目し、等級評価を行うこととなっています。

ただし、受傷時にこの4能力を十分に獲得していない可能性がある小児のケースがなどでは、事故後の学習能力等の各種能力の獲得や集団生活への適応能力に与える高次脳機能障害の影響を勘案する必要があるとされています。

自賠責保険での高次脳機能障害の等級認定基準は以下のとおりです。

等級 認定基準
1 級 1 号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2 級 1 号
 
神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3 級 3 号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5 級 2 号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7 級 4 号 神経系統の機能または精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9 級 10 号 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することが出来る労務が相当な程度に制限されるもの

 

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