ここでは、高次脳機能障害の損害賠償案件において、実際の裁判例をいくつかご紹介します。
1.東京地裁平成24年12月18日・交民集45巻6号1495頁
<事案>
後遺障害の内容/等級:高次脳機能障害・5級2号
年齢・性別・職種:30歳(症状固定時)・男性・大工
賠償額(総額):約1億3350万円
<判例の概要>
自賠責の判断では高次脳機能障害を否認されていたが、画像上軽度の脳室の拡大及び局所的な脳委縮が認められるとして、高次脳機能障害として後遺障害等級5級2号に相当すると判断したケース
<本事例のポイント>
本事例では、自賠責の判断では高次脳機能障害を否認されていましたが、裁判所は、画像上軽度の脳室の拡大及び局所的な脳委縮が認められる判断していることから、自賠責と裁判所の判断が分かれたケースになります。
このように自賠責で否認されたとしても、裁判によって高次脳機能障害の存在が認定されるケースもありますので、同じようなケースに遭遇されている方は弁護士に一度ご相談ください。
2.大阪高裁平成21年3月26日判決
<事案>
後遺障害の内容/等級:高次脳機能障害・9級
年齢・性別・職種:53歳(症状固定時)・男性・建設業
賠償額(総額):約2695万円
<判例の概要>
画像所見がなかった場合において、症状や医師の診断等から後遺障害等級9級に相当する高次脳機能障害を認めたケース
<本事例のポイント>
高次脳機能障害に該当するか否かの判断にあたっては、MRI画像やCT画像画像所見の有無が重要となることは、「高次脳機能障害の等級認定における問題点」のページで説明したとおりです。
ところが、上記の裁判例の事案では、MRI画像とCT画像による所見はなかったにもかかわらず、症状や医師の診断等から後遺障害等級9級に相当する高次脳機能障害を認めた事例です。ただし、現状としては、高次脳機能障害の認定にあたってMRI画像・CT画像による画像所見を要するとの見解が、裁判実務においても多数を占めているものと考えられます。