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1 高次脳機能障害とは
そもそも、高次脳機能とは、単なる視覚・聴覚等の感覚や筋の収縮や関節の屈曲などの運動等、人が生まれながらにして備えている能力を超えて、次第に学習して身についてくる「言語」「空間認知」「対象の認知」「目的を持った動作」「記憶」「計画的な行動」等を意味するものとされています。
そして、交通事故損害賠償実務において、高次脳機能障害とは、交通事故により外部から頭部に力が加わり脳が損傷を受け(脳外傷)、高次脳機能(大脳の機能)に障害が生じる場合のことをいうと定義されています。
交通事故損害賠償実務との関係では、しばしば高次脳機能障害の有無や、その等級、労働能力喪失率や介護費用等が争点となります。
2 高次脳機能障害の症状
この高次脳機能障害の主な典型的症状としては、①認知障害、②行動障害、③人格変化があるとされています。
(1)①認知障害について
認知障害は、記憶・記銘力障害、注意・集中力障害、遂行機能障害等で、具体的には、新しいことを覚えられない、気が散りやすい、行動を計画的に実行できない等の症状が挙げられます。
(2)②行動障害について
行動障害は、職場、学校などの社会のマナーやルールが守れない、話が回りくどく要点を相手に伝えることができない、行動を抑制できない、危険を予測・察知して回避的に行動することができない等の症状が挙げられます。
(3)③人格変化について
人格変化は、事故以前に見られなかった発動性低下と抑制低下であり、より具体的には自発性低下、気力の低下、衝動性、易怒性、自己中心性等が挙げられます。
3 軽度外傷性脳損傷(MTBI)
自賠責保険実務において、高次脳機能障害であると判断されるためには、MRI画像又はCT画像による所見が必要であるとされ、また、意識障害の有無・程度が重要な判断要素になります。詳細は、「高次脳機能障害の診断・認定基準」のページをご覧ください。
しかし、重度の意識障害が生じなくても、脳に損傷を負ったため、記憶力・判断力などの認知障害や感情易変・攻撃性・自発性の低下などの人格変化などの高次脳機能障害が生じることもあります。
このようなケースにおいて、被害者に脳震盪症候群、軽度外傷性脳損傷(MTBI)などの診断名が付けられることがあり、交通事故損害賠償実務では軽度外傷性脳損傷(MTBI)とは「軽症頭部外傷後の脳損傷」をいうと定義されています。
そして、この軽度外傷性脳損傷(MTBI)は、高次脳機能障害の判断要素に関連して問題となります。具体的には、高次脳機能障害は、脳の損傷、脳の器質的病変に基づくものであるために、MRIやCT等においてその存在が認められることが認定の重要な要素とされていることから、このMTBIのケースでは、脳損傷を確認できる画像所見がなく、交通事故の損害賠償において適正な救済を受けられないという深刻な問題が生じ得ます。
もっとも、過去の裁判例の中にはMTBIを高次脳機能障害と認定した事例もあるため、このようなケースでも専門家である弁護士に相談されることが大切です。