被害者は、自賠責保険会社に対し、保険金額の限度において損害賠償額の支払いを請求できます。これを「被害者請求」といいます。
被害者請求は、以下の流れで行います。
① 必要書類の収集
「後遺障害診断書」や、これまで受けてきた治療に関する資料(診療報酬明細書や診断書)、交通事故の状況に関する資料(交通事故証明書や事故発生状況報告書)など、審査の資料として必要な書類を集めて、加害者の加入する自賠責保険会社に提出します。
弁護士が代理人についていれば、弁護士が必要な資料を判断・収集して提出します。
② 自賠責調査事務所による審査
弁護士から書類を提出した後は、加害者の加入する自賠責保険会社から、第三者機関である損害保険料率算出機構の自賠責調査事務所に資料が送付され、自賠責調査事務所において後遺症の等級該当性の審査が行われるという流れで進められます。
通常、1~2ヶ月で結果の通知がなされることが多いです。
③ 結果の通知
審査が完了すると、自賠責調査事務所から弁護士に対し、後遺症の等級認定の結果の通知が送付されてきます。この結果に不服がなければ、弁護士を代理人として保険会社との示談交渉や訴訟提起の手続きに入ることになります。
④ 異議申し立て
他方、後遺症の等級認定の結果に不服がある場合は、被害者請求の場合、弁護士が代理人として自賠責保険会社に対して異議申し立てを行い、根拠となる新たな診断書等を添付して、再度判断を求めるという流れで、不服を申し立てることができます。
次に、「被害者請求」の特徴について説明します。
後遺症の等級を得るためだけであれば、以上のような流れを被害者側で手続しなくても、「事前認定」によることも可能です。また、被害者請求をするにしても自分で書類を提出することも可能です。
しかし、当弁護団では、次の理由から、「弁護士が代理人となって」「被害者請求」を行うことをお勧めしています。
第1に、保険会社のお客は加害者ですから、事前認定の場合、被害者に有利な資料をあえては出してくれないことがあるという特徴があります(事前認定については、後遺症の事前認定の流れと特徴をご参照ください)。そのため、特に後遺症の等級認定が難しい症状の場合、適切な資料をそろえて被害者請求を行うことにより、認定の可能性が高まると言えます。
第2に、被害者請求には、加害者側との示談が成立していない段階でも、自賠責保険による補償金の支払いが受けられるという特徴があります。重度の後遺症を負った方の場合、仕事への復帰もままならないケースが通常です。当面の資金がなくては裁判で賠償金を勝ち取るための費用を出すことも困難です。この点でも、当弁護団は、弁護士が代理人となって被害者請求を行うことお勧めしています。
第3に、実際の請求手続において、自賠責保険の金額や後遺症の等級認定で被害者が納得ができない結果となる多くの原因は、医師が作成する後遺障害診断書が不十分であったり、添付する資料に不備があるなど、書類の不備です。事故で大きな肉体的・精神的痛手を受けた被害者や近親者が、刑事記録や画像など、専門的な書類を自ら取り寄せるのは手間であり、煩雑です。きちんと結果を得たい場合は、弁護士に相談し、必要書類の取り寄せや取捨選択を委ねることが望ましいと言えるでしょう(なお、残しておくべき画像等については、後遺障害認定サポートをご参照ください)。
第4に、被害者請求を行うと、自賠責の調査事務所から直接問い合わせがあり、説明を求められることがあります。このような場合、適切な説明を行えるかどうかで、結果が変わってきますので、この点でも弁護士に依頼するのが望ましいと言えるでしょう。