後遺症を伴う交通事故被害に遭われた会社員・公務員の方のため、後遺症(後遺障害)を伴う交通事故の損害賠償請求における、⑴注意点、⑵損害の算定、⑶手続きの流れについてご説明します。
なお、民事における損害賠償の他、加害者の刑事裁判においても、被害者として手続きに参加し加害者への質問や意見陳述を行うことも可能です(被害者参加制度)。
⑴ 一般的な注意点
交通事故により重度の後遺症(後遺障害)を負われた被害者の方の場合、自身の身体の自由が制限されたり、失われてしまったことへの喪失感や、ストレスのかかる保険会社とのやり取りを早く終わらせたいという思いなどから、正当な賠償額の基準がわからないまま、あるいは後遺症(後遺障害)の等級認定において適切な認定が認められないまま、加害者側の保険会社の提示額を鵜呑みにして示談をしてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、後遺症(後遺障害)を伴う交通事故における実際の損害賠償の実務では、そもそも本来認められるべき等級が認定されずにより軽度の等級を前提として賠償額が低く算定されていたり、等級自体は適切に認定をされていたとしても、加害者側の保険会社の提示額が裁判を行った場合に基準とされる賠償額を大幅に下回っているというケースがほとんどであるといえます。
当サイトでは、後遺症(後遺障害)を伴う交通事故に遭われた被害者の方が正当な救済を受けられるよう、無料法律相談や概算賠償額診断サービス(無料)を行っておりますので、示談をされる前に、お気軽にご相談ください。 また、後遺障害を伴う交通事故の損害賠償請求権は、原則として、症状固定日から3年という短い期間で時効によって消滅してしまうため、できるだけ早期にご相談されることをお勧めしております。
⑵ 会社員・公務員の休業損害・逸失利益
まず、休業損害については、交通事故により仕事ができず得られなかった、本来得られるべき給与、各種手当、賞与や昇格遅延による損失等が対象となり、基礎収入については、原則として事故前3ヶ月間の収入額の平均額が採用されます。
対象となる期間は、原則症状固定日までが相当期間とされます。そして、休業損害を受け取るためには、休業損害証明書や前年度の源泉徴収票といった被害者の方の休業状況と基礎収入を証明する資料が必要となります。また、交通事故により受けた傷害や治療のための欠勤等を原因として、退職したり解雇された場合には、雇用関係解消後についても、症状固定までの間の収入の減少が事故に起因するものと認められれば、この期間の休業損害が認められる場合があります。
次に、逸失利益は、症状固定後も後遺症(後遺障害)が残存し、労働能力が減少するために将来発生すると認められる減収のことをいい、被害者の事故前の収入の額(基礎収入)に、後遺障害による被害者の労働能力喪失率、及び労働能力喪失期間の年数に応じて中間利息を控除した係数(ライプニッツ係数)を乗じて算定されます。
基礎収入の考え方については、休業損害の場合と基本的には同様ですが、後遺障害逸失利益の算定においては、若年の方の場合、事故時の被害者の年齢によっては長期の将来にわたることから、事故時の現実収入が低額であったとしても、労働能力喪失期間中に収入が増額される蓋然性を証明できれば、その金額をもって基礎収入とされることもあります。
会社員・公務員の方の例として、被害者が35歳会社員の男性(年収600万円)で後遺障害等級5級が認定されたという場合、裁判を行った場合の後遺症(後遺障害)に関する損害額の目安は、以下のとおりとなります(休業損害はここでは割愛します。)。
後遺障害慰謝料 1400万円(赤本基準)
後遺障害逸失利益 7490万6220円(600万円×0.79×15.803)
※ 基礎収入 600万円
労働能力喪失率 79%
労働能力喪失期間 32年(係数:15.803)
これらの他、損害費目として、治療費等、付添看護費、通院交通費、装具購入費、 休業損害、入通院慰謝料、将来介護費、自宅改造費、自動車改造費・介護車両代、介護用品代、将来治療費(手術費)等の各損害、さらに、裁判をした場合には弁護士費用、遅延損害金等が認められることになります。
会社員・公務員の方の後遺症(後遺障害)を伴う交通事故の損害賠償は、このように損害項目が多岐にわたり、また額が高額となることも少なくありません。もっとも、損害項目によっては必要性や額について熾烈な争いとなることもあり、また事故状況によっては、過失相殺による減額がなされるケースもありますので、個別のケースにおける目安をお知りになられたい方は、当サイトの弁護士による無料法律相談や概算賠償額診断サービスをご利用ください。
⑶ 手続きの流れ
以下では、後遺症(後遺障害)を伴う交通事故における損害賠償請求の手続きの流れを簡潔に説明します。
詳細は、当サイトの「交通事故で後遺症を負ったあとの流れ」のページをご参照ください。
① MRI画像等の認定資料の収集、刑事記録の取付け
② 症状固定後、自賠責保険に対する被害者請求
等級認定結果に不服がある場合は異議申立
③ 加害者保険会社との示談交渉
④ 訴訟手続き(裁判)
※示談が成立した場合には訴訟はしません