Archive for the ‘コラム’ Category

後遺障害慰謝料の増額(3)

2020-09-30

 東名高速道路で発生した悲惨な交通死亡事故等を契機に、道路交通法が改正され(令和2年6月30日施行)、「あおり運転」に対する罰則や免許の取消し等の行政処分が創設されました。

 具体的には、他の車両等の通行を妨害する目的で、交通の危険を生じさせるおそれのある方法(急ブレーキ禁止違反や車間距離不保持等)により「一定の違反」をした場合(妨害運転)に、最大で懲役3年の刑に処せられ、かつ免許が取り消されることとなりました。

 さらに、上記の妨害運転により著しい交通の危険を生じさせた場合(高速道路等において他の自動車を停止させるなど)は、最大で懲役5年の刑に処せられることとなりました。

 このように「あおり運転」が明確に刑罰化されたことにより、あおり運転に関する後遺障害事案においても、慰謝料増額事由の一つとして主張していくべき事案も少なからずあろうかと存じます。お気軽にご相談ください。

弁護士 柳田 清史

定期金賠償とは?

2020-09-15

さて、今回は、令和2年7月9日、最高裁で、交通事故実務の今後の運用において重要な判決が出ましたので、ご紹介したいと思います。

この最高裁判決の事案は、当時4歳の児童が路上でトラックにはねられ重い障害が残ったという事案です。

この事案では、逸失利益の損害賠償金の支払方法について、「〇年から〇年まで毎月〇日限り〇〇万円を支払え」という判決を命じることができるか否かという点が問題となりました。つまり、定期金賠償を命ずることができるかという点が争点となりました。

結論として、最高裁判所は、逸失利益部分の定期金賠償を認めました。

定期金賠償が認められた場合における被害者側の最大のメリットは、中間利息控除がない点にあるといえます。一時金賠償の場合、将来受け取る賠償金を一括で受け取るため、その対応する期間の利息を控除した形で賠償額が算定されることとなるので、実質的な手取り金額が大きく減額する場合があります。他方で、定期金賠償の場合では、この中間利息控除が行われないため、最終的には受け取る金額が多くなる可能性が高いものといえます。

しかし、定期金賠償にはデメリットも考えられますので、この続きは次回のコラムで述べたいと思います。

弁護士 疋田 優

将来の付添費⑶ 介護態勢の変更

2020-05-27

 

事故により被害者に後遺障害が残った場合、被害者に介護が必要となる場合があります。その際の付添に要する費用は損害賠償の対象となりえることは、これまでもコラムでお伝えしてきました。

しかし、介護が長期にわたる場合などは、介護の態勢は、ずっと同じ態勢が続くとは限りません。このような場合、損害額にはどのような影響が生じるのでしょうか。

一般に、介護に当たる近親者が高齢の場合、近親者による介護を被害者の余命が終わるまで期待することができません。そこで、裁判実務においては、一般に、近親者が就労可能な終期と考えられる67歳に達するまでは、近親者による介護で足りるとして、近親者による付添費の基準額によって付添費の額を決めています。

その後については、職業付添人による介護の必要があるとの考え方から、職業付添人による付添費が認められる、という扱いになります。

また、現在は近親者による介護だが、近い将来には職業付添人による介護に変更される予定である、という場合、近い将来における職業付添人による介護への意向の蓋然性がどの程度認められるかによって、金額が変わってきます。

 介護の期間は一般に長期間になればそれだけ介護費用も多額になり、争点になることがあります。早めに弁護士にご相談されることをお勧めします。

弁護士 田 保 雄 三

新型コロナウイルス感染症と入通院(傷害)慰謝料

2020-04-23

 新型コロナウイルスの感染症が世界中で蔓延し、私たちの日常生活全般に著しい影響が生じています。交通事故の被害に遭われて通院中の方々の中には、新型コロナウイルスへの感染予防のために、傷病の治療のための通院を控えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか(実際に、私個人にご依頼いただいている交通事故被害者の方々の中にも、通院したいけど感染が怖いので行けないという方が数多くいらっしゃいます)。今回の私のコラムでは、「新型コロナウイルス感染症と入通院(傷害)慰謝料への影響」をテーマにお話させていただきます。

・入通院慰謝料と算定方法

 まず、前提として、入通院(傷害)慰謝料とは、交通事故被害者が怪我をして入通院せざるを得なくなったことに対する精神的苦痛をお金に換算したもので、代表的な算定方法には、①自賠責基準と②裁判(弁護士基準)基準の2つがあります。

自賠責基準の入通院慰謝料は、「4,200円×実通院日数×2」 (実通院日数×2が実通院日数を上回る場合には、総治療期間を限度とします)の計算式で算定されます。通院回数に応じて慰謝料の金額が決まる仕組みであり、保険会社からの提示金額は自賠責基準に基づき算定されるのが一般的です。

裁判(弁護士)基準の入通院慰謝料は、裁判実務で用いら  れる基準であり、総治療期間(実際に入通院した期間)を基準として算定され、自賠責基準よりも大きな金額となるのが一般的です。弁護士が保険会社と示談交渉する場合、裁判基準により算定した入通院慰謝料を請求します。

・新型コロナウイルス感染症の影響

 傷病の治療のために通院中の方が、新型コロナウイルスへの感染予防のために通院を控えた場合、通院回数が減少した分、上記①の自賠責基準で算定した入通院慰謝料の金額が減少してしまいます。また、通院できない期間が長期に及んだ場合、通院の必要が無いと判断されて、治療費の一括払いが打ち切られてしまう可能性もあります。これに対し、上記②の裁判基準(弁護士基準)で算定する場合には、原則として入通院慰謝料の金額に影響はありません。もちろん、通院回数が減少したことで、治療費一括払いの打切りの可能性はありますが、弁護士が介入して通院回数が減少した理由を合理的に説明すれば、打切りを回避できる場合もあります。

 このように弁護士が介入して示談交渉をすれば、新型コロナウイルス感染予防のために通院回数が減少したとしても、通院期間に応じて適正な入通院(傷害)慰謝料を受け取ることができる可能性が高くなります(当弁護団にお問い合わせいただければ、適切な助言をさせていただきます)。

 最後になりましたが、一日も早い新型コロナウイルス感染症の終息と、皆さまのご健康を心よりお祈り申し上げます。

弁護士 藏 田 貴 之

後遺障害慰謝料の増額(2)

2020-03-03

 近年の携帯電話使用等にかかる交通事故の急速な増加に対応するため、令和元年12月1日に道路交通法が改正され、自動車やバイクを運転中にスマホ等を操作する、いわゆる「ながら運転」に関する罰則が強化されました。

 主な罰則強化の内容は、反則点数や反則金の引き上げ、刑罰の強化(携帯電話の保持についても懲役刑が定められています。)です。

交通事故における慰謝料の算定においては、一定の基準が設けられていることは当サイトでもお伝えしているとおりですが、加害者に故意もしくは重過失(例えば、無免許、ひき逃げ、酒酔い等)または著しく不誠実な態度がある場合には、基準額よりも増額されることがあります。

 上記の法改正による「ながら運転」の厳罰化に伴い、今後民事の損害賠償実務においても、「ながら運転」により慰謝料が増額されるケースが増加していくのではないかと考えられます。実際に刑事裁判ではありますが、近時スマホで「ポケモンGO」を使用しながら死亡事故を起こした事案において、過失の態様が非常に悪質であるとして禁固3年の実刑判決という交通事故事犯では極めて重い判決がなされた事案もあります(名古屋地方裁判所一宮支部平成29年3月8日判決)。

 このように、後遺障害事案においても慰謝料増額事由の一つとしてこのような主張が可能な事案も少なからずあろうかと存じます。お悩みの際は、専門家の意見も踏まえてご検討されることをお勧めいたします。

弁護士 柳田 清史

「間接損害とは?」

2020-02-04

 さて、今回は、交通事故によって直接の被害者となった方以外の第三者が、被害者本人の事故による受傷によって損害を被った場合の問題について説明したいと思います。
 この問題は、間接損害や企業損害という呼ばれ方をされており、この点に関連する判例として、最高裁昭和43年11月15日判決があります。この判決は間接損害の一般論について言及しているわけではないのですが、その後の下級審判決の判断要素において、前記最高裁が判示した要素が用いられる傾向にあります。具体的には、①代表者への実権集中、②代表者への非代替性、③会社と代表者との経済的一体性という前記最高裁が判示した要素に基づき、これが肯定される場合には間接損害を認める状況にあります。
 例えば、こ間接損害(企業損害)を肯定した下級審裁判例としては、機械設備業務を営む会社が、代表者が受傷して休業したことに伴い、その会社が受注していた工事を外注し、外注費の損害賠償を求めたケースがあります(名古屋地裁平成19年10月26日判決)。この事案は、取締役は代表者とその母親のみで、他に従業員はおらず、機械設備に関する主要な業務は主として代表者が行っていたという事案でした。
 このような会社と代表者との間に経済的一体性が認められる事案では、会社から加害者に対する賠償請求が肯定されるケースもありますので、一度弁護士に相談してみることが大切です。

弁護士 疋田 優

将来の付添費⑵ 介護の期間

2019-12-25

前回の私のコラム(「将来の付添費⑴介護の必要性」)では、交通事故の後遺障害によって生じる「将来の付添費」と言われる損害項目が、いかなる場合に発生するのかということについて解説しました。

今回は、将来の付添費が損害として認められる場合、いかなる介護期間が対象になるのかについて解説したいと思います。

さて、結論から言うと、介護の期間は、原則として被害者が生存する期間です。

具体的には、症状が固定した年の生命表または簡易生命表上の平均余命年数を基に決められます。

この点、植物状態(いわゆる遷延性意識障害)のケースなどで、加害者側から、平均余命まで生存できる可能性が低いとして、生存可能期間を平均余命よりも短期間に限定すべきとの主張が行われることがあります。しかし、近時の裁判例は、平均余命まで生存する蓋然性が否定される特別な事情(例えば重度の合併症で健康状態が悪い状況にあるなど)が認められない限り、生存可能期間を平均余命の年数をもって認めるのが相当とする傾向があると指摘されています。

 被害者の年齢にもよりますが、介護の期間は一般に長期間になればそれだけ介護費用も多額になりますので、加害者側が争ってくることも想定されます。早めに弁護士にご相談されることをお勧めします。

弁護士 田 保 雄 三

交通事故と休業損害②

2019-11-25

 前回の私のコラム「休業損害①」では、交通事故により怪我をしてしまって仕事を休んだ場合の休業損害について解説しました。今回は、特にサラリーマン(給与所得者)の方の休業損害を取り上げます。前回のコラムで説明しましたように休業損害は「収入日額×休業日数」の計算式で算定されます。特にサラリーマン(給与所得者)の方の休業損害は、以下の方法で算定されるのが一般的です。

・収入日額

事故前の3ヶ月(90日)に支払われた給与の合計額を、90日(もしくは実際の稼働日数)で割り、収入日額を計算します。3ヶ月間の給与は、基本給に加えて各種手当などを加算したいわゆる額面額の合計額です。

・休業日数

 現実の休業日数のうち、「交通事故の傷病が原因となって休業が必要な日数」に限定されます(交通事故により重度の後遺症を負った方の場合、休業の必要性が肯定されることが多いと思われます)。有給休暇を利用した場合も休業日数に含めることができます。

・証明方法

 事故前の給与額と休業日数は、会社に「休業損害証明書」(書式)を作成してもらい、証明する方法が一般的です。収入を証明する資料の収集できない場合には、「賃金センサス」という厚生労働省が調査した平均賃金額によって計算することもあります。

・交通事故が原因で退職せざるを得なくなった場合

 交通事故の傷病が原因で退職せざるを得なくなった場合にも、退職後の休業損害が認められる可能性があります。ただし、退職による収入の喪失が休業損害として認められるのは、「交通事故と退職との間に因果関係がある」場合に限られます(保険会社からはこの点が厳しく判断される傾向にあります)。

 交通事故により仕事ができなくなり無収入となってしまう方にとって、休業損害が支払われるかは非常に重要な問題です。休業損害について保険会社の対応に疑問を感じる方は、弁護士にご相談されることをお勧めします。

弁護士 藏 田 貴 之

後遺障害診断書(1)

2019-10-15

 今回は、後遺障害診断書についてお話します。

 後遺障害が残る傷害を負われた方については、一般に自賠責保険の後遺障害等級認定を受けて、後遺障害に関する損害を請求していくこととなります。

 その際、もっとも重要となる資料として後遺障害診断書があります。

 後遺障害診断書は、症状固定後に、主治医に作成してもらうことが一般的ですが、その記載内容は多岐に亘り、症状固定後に残存した症状や障害を漏れなくかつ適切に記載してもらうことが非常に重要となります。

 記載内容に漏れがあったり、カルテの記載と整合しないような記載があるような場合には、後遺障害等級認定において、適切な等級が認定されないケースも少なからずあります。このような場合、認定された結果に対して、異議申立てを行うことも可能ではありますが、速やかに適切な認定を受けるためには、やはり当初から適切な内容が記載された後遺障害診断書を取得することが肝要です。

 当弁護団においては、後遺障害診断書の取得に関して、取得すべきタイミングや、事前に主治医と認識を共有し適切な記載をしてもらうための方法等についても、アドバイスを行っておりますので、ご不安に思われる方はお気軽に一度ご相談ください。

弁護士 柳田 清史

会社役員の逸失利益における基礎収入の算定について

2019-09-17

 さて、今回は、会社役員の方が交通事故の被害者となった場合の逸失利益について、よく問題となる基礎収入の算定について説明したいと思います。

 会社役員の基礎収入には実質的な利益配当部分が含まれていることがままあることから、その基礎収入は、労務対価部分に限るものされています。そして、会社役員である被害者の方が受領していた役員報酬のうち労務対価部分の額に関して争いになるケースが多くあります。

 労務対価部分が役員報酬に占める割合については、一般的に、会社の規模・利益状況、他の役員・従業員の職務内容と報酬・給与の額、事故後の当該役員及び他の役員の報酬額の推移等を勘案して総合的に判断されます。そのため、ご自身のケースでどの程度の労務対価性が認められるのかを判断するのは極めて困難だと思われますので、弁護士による無料相談等を一度活用されることをおすすめします。

弁護士 疋田 優

« Older Entries

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー