新型コロナウイルスの感染症が世界中で蔓延し、私たちの日常生活全般に著しい影響が生じています。交通事故の被害に遭われて通院中の方々の中には、新型コロナウイルスへの感染予防のために、傷病の治療のための通院を控えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか(実際に、私個人にご依頼いただいている交通事故被害者の方々の中にも、通院したいけど感染が怖いので行けないという方が数多くいらっしゃいます)。今回の私のコラムでは、「新型コロナウイルス感染症と入通院(傷害)慰謝料への影響」をテーマにお話させていただきます。
・入通院慰謝料と算定方法
まず、前提として、入通院(傷害)慰謝料とは、交通事故被害者が怪我をして入通院せざるを得なくなったことに対する精神的苦痛をお金に換算したもので、代表的な算定方法には、①自賠責基準と②裁判(弁護士基準)基準の2つがあります。
① 自賠責基準の入通院慰謝料は、「4,200円×実通院日数×2」 (実通院日数×2が実通院日数を上回る場合には、総治療期間を限度とします)の計算式で算定されます。通院回数に応じて慰謝料の金額が決まる仕組みであり、保険会社からの提示金額は自賠責基準に基づき算定されるのが一般的です。
② 裁判(弁護士)基準の入通院慰謝料は、裁判実務で用いら れる基準であり、総治療期間(実際に入通院した期間)を基準として算定され、自賠責基準よりも大きな金額となるのが一般的です。弁護士が保険会社と示談交渉する場合、裁判基準により算定した入通院慰謝料を請求します。
・新型コロナウイルス感染症の影響
傷病の治療のために通院中の方が、新型コロナウイルスへの感染予防のために通院を控えた場合、通院回数が減少した分、上記①の自賠責基準で算定した入通院慰謝料の金額が減少してしまいます。また、通院できない期間が長期に及んだ場合、通院の必要が無いと判断されて、治療費の一括払いが打ち切られてしまう可能性もあります。これに対し、上記②の裁判基準(弁護士基準)で算定する場合には、原則として入通院慰謝料の金額に影響はありません。もちろん、通院回数が減少したことで、治療費一括払いの打切りの可能性はありますが、弁護士が介入して通院回数が減少した理由を合理的に説明すれば、打切りを回避できる場合もあります。
このように弁護士が介入して示談交渉をすれば、新型コロナウイルス感染予防のために通院回数が減少したとしても、通院期間に応じて適正な入通院(傷害)慰謝料を受け取ることができる可能性が高くなります(当弁護団にお問い合わせいただければ、適切な助言をさせていただきます)。
最後になりましたが、一日も早い新型コロナウイルス感染症の終息と、皆さまのご健康を心よりお祈り申し上げます。
弁護士 藏 田 貴 之